Adobe Analyticsの新パスレポート「フロー」の知られざる威力と活用方法

Post date: Jan 04, 2017 11:35:49 AM

もう何年も進化していなかったパスレポートが2016年10月にようやく刷新され、ワークスペースに「フロー」レポートとして追加されています。モバイルのレポートとして先行リリースされていた新UIがWeb用のレポートとして横展開された形で、旧来のUI(Reports&Analytics)におけるパス系のレポートはフリーズされたまま残っています。

「前より見た目が良くなっただけ」ではありません。改めて何がスゴイのか、どう活用すべきかについて詳しく解説します。

新レポート「フロー」のここがスゴイ!

(1)eVarでも使える!

Googleアナリティクスの行動フローレポートは、ページ(コンテンツグループ)とイベントの経路のみに限定されています。

Adobe Analyticsの従来のパスレポートは、管理者が有効化すれば、ページだけでなく任意のProp(カスタム変数)でも実行できるので、サイト内検索キーワードやコンテンツタイプ、日付、ロイヤルティなどのカスタム変数の変遷を分析することができます。

新しいワークスペースの「フロー」では、順次(sequence)セグメントの機能を使ってデータを処理するので、何とeVarでもパス(フロー)を調べられるようになりました!事前の有効化も不要です。

製品、ドメイン、リファラタイプ、製品などのカスタム変数ではない標準変数にも対応しています。

(2)数の制限がなくなった!

以前のパスレポートでは、表示できる数(縦の項目数、横のステップ数)に制限がありました。

「新しいフロー」レポートでは、クリックして無制限に展開できます。

標準では上位5件の項目が表示されます。一番下の「more」をクリックすると、もっと表示されます。

右端のノードをクリックして、先に進むこともできます。こちらも回数に制限はありません。

(3)訪問(セッション)を超えられる!

従来のパスレポートでは、データが訪問(セッション)内に限定されていました。

ワークスペースの「フロー」では、Ad-Hoc Analysisの「パス」レポートと同じように、設定によってスコープを「訪問」から「訪問者」に延長できます。

設定は初期状態では「訪問者」になっているので、逆に「訪問内の動きに限定することもできる」という方が正確ですね。セッション限定の分析はあまり意味がないので、後方互換のために戻すこともできる、という程度の設定です。

設定画面で「コンテナ」と表記されているのは、内部で「Then」の順次セグメントを利用しているためでしょう。

(4)ディメンションを混ぜられる!

最初の設定でディメンションを一つ選択しますが、実は、その後に別のディメンションを混ぜることができるようになりました。以前のように、一つのディメンションに囚われる必要はありません。

方法は簡単。レポートのノード上に別のディメンションをドロップするだけ。

例えば、リファラタイプごとに入口ページを把握し、勝ちパターンを見つけたい場合:

リファラタイプでフローのチャートを作成した後、「ページ」をノードの右にドロップします。

このように、ノードごとに違うディメンションが混ざったフローになります。

(5)選択したパスのセグメントを作れる!

ノードを右クリックして、該当パスを通過した人のセグメントを作成し、詳細分析やターゲティングで利用できるようになりました。

図の例では、「course」系コンテンツからサイトの閲覧を開始し、次に「about」系コンテンツを見た人、つまり「講座情報を検索してサイトにたどり着き、検討を進めるうちに運営者が気になって確認した人」というセグメントが作成されます。このセグメントを使えば、そういった人たちはどこから来たのか?どんなコンテンツを見たのか?申し込みに至った人と至らなかった人の違いは何か?といった詳細分析が可能になります。

例えば、「講座を検討した後にabout系コンテンツを確認した人をキャンペーン情報に誘導すれば、背中を押されて申し込みをより強く意識するようになる」といった仮説を導き出した場合は、「course系コンテンツからサイトの閲覧を開始し、次にabout系コンテンツを見たが、まだキャンペーンを閲覧しない状態で2ヶ月以内に再訪問した人」というセグメントを作成し、そのセグメントに属する人が再訪問した時にキャンペーンのバナーをサイドバーに表示する、というターゲティングが可能になります(Adobe Targetとの連携が必要)。

セグメントを作りたくない場合

まだ未確定なので中間的なセグメントは作りたくない、という場合は、右クリックの「Breakdown」が便利です。

実行すると、ワークスペースに以下のようなフリーフォームテーブルが追加されます。

このセグメントは、このテーブルのみで利用可能です。再利用可能なセグメントとして作成されているわけではないので、セグメントのリストには表示されません。ただし編集はできるので、ローカルの一時的な使い捨てセグメントを作成する方法としても応用できます。

アナリティクスのAPIでも、このように、作成済みのセグメントを指定するのではなく、セグメント条件をその場で(インラインで)指定してデータを得ることが実は可能です。パラメータの異なるLP別でユーザー分析を大量に行いたい時などに便利ですね。詳細はこちら:Inline Segmentation

まとめ

以前は「パスなんて細かいデータを見ても役に立たない」と思ってパスレポートはあまり使っていませんでしたが、今回の改善によって、ようやくパス分析が役に立つようになりました。

解析ツールのレポートUIはざっくりと変化や違いを見つけるものであって、詳細分析やターゲティングにつなげることが重要、というプロダクトマネージャーの考えが貫かれているのが心地良いです。極論を言うと、「アナリティクスのゴールはレポート作成ではなくセグメント作成」です。カスタマーアナリティクスの考え方にも合致しているので、ワークスペースは訪問者単位の顧客分析やターゲティング施策の洗い出し、自動化に役立ちます。

順番を指定するセグメントを作る場合は、まず「フロー」で流れとボリューム感を把握し、そのままセグメントを作成してから微修正を加えるようにすれば、ミスが減るのでおすすめです。