GoogleアナリティクスとAdobe Analyticsのコホート分析を徹底比較!
Post date: Apr 08, 2015 6:36:33 AM
Googleアナリティクスに最近「コホート分析」が追加されましたが、Adobe Analyticsにも実装されています。
この「コホートレポート」がAdobe AnalyticsとGAでどう違うのか、比較してみました。
2015年10月追記:新しくリリースされた分析ワークスペースでもコホート分析が可能になりました
「初回起動コホート」から「リテンション」レポートへ
Adobe Analyticsの場合、いつものPC用UIではなくMobile Services(アプリに特化したレポートUI)にログインする点、2015年1月に名称が「初回起動コホート」から「リテンション」に変わっている点にご注意。
Google Analyticsで「コホート分析レポート」と呼ばれるものは、Adobe Analyticsでは「リテンションレポート」と呼ばれます。
2015年1月の変更点は他にもあります。
初期条件:以前は「週0」に含める母集団が「初回起動(した人)」に固定されていましたが、任意の条件を指定できるようになりました。
例えば、特定のアクション、滞在時間、アプリバージョン、クラッシュ回数、表示した画面、OS、近づいたiBeaconのIDや距離など、標準及びカスタム変数をANDで組み合わせてコホートの条件を指定できます。セグメントを作るのと同じ感覚ですね。
以下は、FacebookまたはTwitterに出稿したAppインストール広告経由でiTunesストアのダウンロードページを表示してインストールし、初めて起動した人のコホートを作成する場合の例です。
戻る条件:「リテンションした」とみなす条件です。「アプリをもう一度起動した」(Webでいう再訪問)という単純な条件だけでなく、「始めて購入した」「ソーシャルのボタンをクリックした」「メルマガでのURLをクリックした」「商品ページを閲覧した」など、任意のアクションを指定できるよう人なりました。これも複数の条件をANDで組み合わせられます。
初期条件(コホートの種類)を「初回起動=1」に、戻る条件を「起動回数>=1」に設定すると、以前の「初回起動コホートレポート」を再現できます。
条件に関わらず、指標の単位は「人数」になります。初回起動の場合は起動回数と人数が一致しますが、翌週以降のリテンション部分では、ユーザー(デバイス)単位でまとめられます。上の例では、156人のうち、翌週に一度でも起動した人が29人、になります。実際には同じ人がその期間に2回以上起動しているかもしれません。
期間:日、週、月から選べるようになりました。
「今日」など直近の期間を含めると集計中の不完全データが表示されるので、終了日も指定できるようになりました。
例えば単位が「日」の場合は昨日までに、単位が「週」の場合は先週の最後の日までにすると、確定した数値のみが表示されます。
そもそも、直近の短期データではリテンションを判定できないので、判定したい期間に合わせてざっくりと直近データを切り取る場合もあります。
Googleアナリティクスとの違い
GoogleアナリティクスのコホートレポートとAdobe Analyticsのリテンションレポートがどう違うのか、表でまとめます。
Adobeの方が汎用的だがアプリ限定
個別の機能で見るといろいろな違いがありますが、実質的な違いは2点。
(1)GoogleのはWeb解析用 vs. Adobeのはアプリ解析用
Google Analyticsのコホートレポートは通常のWeb行動データを分析するためのものですが、Adobe Analyticsのコホートレポートはアプリ用のUI(Mobile Services)でのみ利用可能です。
Adobe AnalyticsのWeb用データの場合は、Report Builderを使えばコホート分析を自動化できます。
参考:Advanced Mobile Cohort Analysis using Adobe Report Builder (Adobe Blog)
ファーストタッチのeVarに初回訪問日を入れておくという方法もあります。
(Mobile Servicesのアプリ登録時にWebのRSIDを指定し、そのRSのライフサイクル指標をONにするという裏技もありますが、予期しない不具合が生じるかも)
(2)Googleのは新規ユーザー獲得でしか使えない vs. Adobeのは汎用的に使える
Google Analyticsのコホートレポートでは、コホート作成条件がユーザー獲得日(新規訪問日)で固定されているので、獲得系施策の評価でしか使えません。初回訪問日だけで区切るのは雑すぎて、リスティングやディスプレイ広告、自然検索、ソーシャル、メールなど、いろいろな経路からの訪問者が混ざってしまいます。セグメントを適用してチャネルやキャンペーン、地域や環境を絞り込んだ上で時間による変化を追うことで、要因の発見や改善アクションに結びつけると良いでしょう。
一方、Adobe Analyticsのコホートレポート(リテンションレポート)では、コホート作成条件を自由に指定できます。
では、コホート分析はどう活用できるのか?以下で考えてみました。
コホート分析の例
分析と、分析後の改善アクションの例です。
会員登録した人は、どの程度の様子見期間を経て初購入するのか?そしてその後、継続的にサイトを再訪問するのか?
→フォローやステップメールの設計に役立てる
メルマガを購読した人が受け取るメールを開封してクリックする率は徐々に減っていくのか?
→メールの内容や配信頻度を見直す
「いいね!」を押した人は、その後サイトを継続的に訪問しているのか?
→ソーシャルにより認知や新規訪問が増えるだけでなく、押した本人にとってのリテンション効果もあるという仮説を検証する
プレミアムプランにアップグレードする優良顧客とフリープランユーザーを早期に予測して判別する条件は?
→わかった判定条件によるメールやWebでのターゲティングを実施し、アップグレード率を高める
最後に
以上、コホート分析について比較してみました。
Googleがベータ版としてコホートレポートをリリースしてAdobeにキャッチアップしたと思ったら、同じタイミングでAdobeが機能強化をしたのでまた差が開いた、という状況が面白いですね。GAのコホートレポートはまだベータ版なので、今後も進化すると思われます。どんどん真似・競争し合って、役立つツールが増えてほしいものです。
コホート分析が追加されたということは、カスタマー視点の行動の変化を時間軸で追いかけるというニーズが高まっているということを意味します。特にアプリの場合は、Webと比べるとリテンションが重要です。アプリの場合はいつでもどこでも手元にあってプッシュ通知できっかけ作りもできるという特徴を活かし、Webサイトの方は情報量やインラタクティブ性を活かす、という役割分担が進んでいるということです。そんな背景もあり、コホート分析はアプリの解析では一般的です。MixPanelやLocalyticsでも実装されています。ページやサイト構造、流入チャネルといった運営側の視点ではなく、カスタマー視点で長期の変化を追う、というスタイルはCustomer Analyticsとも呼ばれます。そのための機能が今後も充実していくはずなので、今のうちから視点を切り替えておきましょう!
2015年10月追記:Reports&Analyticsに追加された新機能「分析ワークスペース」でもコホート分析が可能になりました